ドストエフスキーの『白痴』-「切腹」についての記述

ドストエフスキー(1821-1881)の『白痴』に日本の「切腹」についての言及がある。

「ご存じですかトーツキーさん、噂によると、日本人もよく同じようなまねをするそうじゃないですか」プチーツィンがそう話しかけていた。「日本では、侮辱された人間が侮辱者のところに行って、こう言うそうですよ。『おまえは私を侮辱した。だから私はおまえの目の前で腹を切りに来た』そしてそう言うとともに、本当に侮辱者の目の前で自分の腹を切り裂いてみせ、しかもそれで実際に敵討ちをしたのと同じような極度の満足を得るのだそうです。まったく世の中にはいろいろ変わった性格があるものですね、トーツキーさん」
「つまりあなたは、今回の場合もその日本人のケースと似ていると言うんですね」トーツキーはにっこり笑って答えた。(『白痴』第1部16)


こうした事例が本当にあったとは思えないが、「切腹」は日本人がおこなう奇習としてロシアに伝わっていたようである。

「切腹」について民俗学的な立場から検討を加えた書に千葉徳爾『日本人はなぜ切腹するのか』があるが、同書によると、腹の内臓には人間の本心が宿るという考えが古くはあったという。腹を切って、臓腑を示すのは、自分の本当の心持ちを知らしめること。「切腹」は自身の真情を他者に示すための手段として発生し、伝承されたものであったと同書は指摘している。あくまでも「目下の仮説」であると著者は断っているが、その後、これを否定する説というのも出てはいないようである。

【典拠文献・参考文献】
千葉徳爾『日本人はなぜ切腹するのか』東京堂出版 1994年9月
望月哲夫訳『白痴1』河出文庫 2010年7月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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