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「あぜこし」「すくはり」…

「畔越(あぜこし・あせこし)」「足張(すくはり)」「長非子(ながひこ)」「古僧子(こほうしこ)」「酒流女(するめ)」……上記はいずれも古代の木簡に記されていた稲の品種名。平川南『日本の原像』によると、8~10世紀の遺跡から出土した種子札(たねふだ)と呼ばれる木簡に上記のような稲の品種名が記されているということである。稲にはすでに古代から固有の品種名が付けられていた。同書には古代の稲の品種名として「畔越」以下、24種類の名称が示されている。

伊予国宇和郡の戦国武将、土居清良の一代を記した『清良記』は、その巻7「親民鑑月集」(1702~31年頃成立)が当地の農事を記録していて、日本最古の農書ともいわれているが、同書には90種類以上もの稲の品種名が記載されている。そのなかには「畔越」「栖張(=足張)」といった古代以来の品種名もあり、それらが数百年から千年近くにわたって栽培されてきたものであることを示している。ところで、この古代の品種名、奇異な響きのものが多いが、「畔越」は田の畔を越すように育つ、「足張」はまっすぐに張る、「長非子」は長く伸びる、「古僧子」は芒(のぎ)がない、「酒流女」は早く芽が出る、という意。これらの品種名には稲の健やかな生長を願う古代人の思いが込められていたのである。

【参考文献】
平川南『日本の歴史2 日本の原像』小学館 2008年1月

テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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