「女人入眼の国」

「女人入眼」――入眼は絵を描く時など最後に瞳を点じて完成とすることから、物事を成し遂げる、仕上げをするといった意。日本は女人入眼の国であるという言い伝えが古くからあったようで、慈円(1155-1225)の『愚管抄』(歴史書)には、

①女人此国ヲバ入眼スト申伝ヘタルハ是也。(女人が日本の国を完成するといい伝えられているのはこのことである。)

②女人入眼ノ日本国イヨイヨマコト也ケリト云ベキニヤ。(日本国は女人が最後の仕上げをする国であるということは、いよいよ真実であるというべきではあるまいか。)


などとある(①は皇極天皇・孝謙天皇という女帝が即位したこと、②は鎌倉幕府で北条政子、京都朝廷で藤原兼子が実権を握っていたことを指す)。歴史の重要な局面では女性が決定的な役割を果たす=「女人入眼」。慈円はこれを日本史を流れる法則の一つと理解していたようである。

慈円は知るよしもないが、戦国時代には洞松院尼、寿桂尼といった女性の戦国大名もいた(洞松院尼は赤松家の領国=播磨・備前・美作を三十年以上にわたって事実上支配、寿桂尼は駿河今川家の実権を握った)。男性原理そのものと見える戦国社会でも、「女人入眼」の事実がある。日本の歴史は女性原理というものを排除しない柔軟な構造をもっていた。明治維新~昭和の敗戦の近代軍事国家の時代のみがそれを排除した特殊な時代であったといえるかもしれない。

【典拠文献・参考文献】
岡見正雄・赤松俊秀校注『日本古典文学大系86 愚管抄』岩波書店 1967年1月
永原慶二責任編集『日本の名著9 慈円 北畠親房』中央公論社 1983年9月
今谷明『戦国の世 日本の歴史5』岩波ジュニア新書 2000年2月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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