「妖怪」と「幽霊」

妖怪(おばけ・化け物)と幽霊の違い。柳田国男(民俗学者)はその著『妖怪談義』の中で両者の間に次のような違いがあると述べている。

誰にも気のつく様なかなり明瞭な差別が、オバケと幽霊との間には有ったのである。第一に前者は、出現する場処が大抵は定まって居た。避けてそのあたりを通らぬことにすれば一生出くはさずに済ますことも出来たのである。これに反して幽霊の方は、足が無いといふ説があるに拘はらず、てくてくと向ふから遣って来た。彼に狙はれたら、百里も遠くへ逃げて居ても追掛けられる。そんな事は先づ化け物には絶対に無いと言ってよろしい。第二には化け物は相手を択ばず、寧ろ平々凡々の多数に向って、交渉を開かうとして居たかに見えるに反して、一方はたゞこれぞと思ふ者だけに思ひ知らせようとする。(中略)最後にもう一つ、これも肝要な区別は時刻であるが、幽霊は丑みつの鐘が陰にこもって響く頃などに、そろそろ戸を敲いたり屏風を掻きのけたりするといふに反して、一方は他にも色々の折りがある。器量のある化け物なら、白昼でも四辺を暗くして出て来るが、先づ都合のよささうなのは宵と暁の薄明りであった。


柳田国男は『一目小僧その他』の中では、神の零落したものが妖怪であるとも述べている。

何れの民族を問はず、古い信仰が新しい信仰に圧迫せられて敗退する節には、其神は皆零落して妖怪となるものである。妖怪は言はゞ公認せられざる神である。


柳田国男の上引のような見方をまとめると次のようになる。

①妖怪は出現する場所が決まっているが、幽霊はどこにでも現れる。
②妖怪は誰にでも現れるが、幽霊は決まった相手のもとに現れる。
③妖怪の現れる時刻は宵と暁が主だが、幽霊は丑三つ時といわれる夜中に現れる。
④妖怪は神の零落したものだが、幽霊は人間の死霊である。

古くからの妖怪譚、幽霊譚にはこれに当てはまらないケースもあるだろうが、おおよそのところはこの4点が妖怪と幽霊の顕著な違いといえそうである。

【参考文献】
『柳田国男全集』第7巻 筑摩書房 1998年11月
『柳田国男全集』第20巻 筑摩書房 1999年5月

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テーマ : 歴史雑学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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