中島敦「カバ」の歌

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中島敦(1909-1942)の歌稿にある「河馬」の歌

  河馬の歌
うす紅くおほに開ける河馬の口にキャベツ落ち込み行方知らずも
ぽっかりと水に浮きゐる河馬の顏郷愁(ノスタルヂア)も知らぬげに見ゆ
この河馬にも機嫌不機嫌ありといへばをかしけれどもなにか笑へず
赤黒きタンクの如く並びゐる河馬の牝牡(めすおす)われは知らずも
水の上に耳と目とのみ覗きゐていぢらしと見つその小さきを
わが前に巨(おほ)き河馬の尻むくつけく泰然として動かざりけり
無礼(なめ)げにも我が眼の前にひろごれる河馬の臀(ゐしき)のあなむくむくし
臀(ゐさらひ)のたゞ中にして三角の尻尾かはゆし油揚のごと
これやこのナイルの河のならはしか我に尻向け河馬は糞(まり)する
事終り小さき尻尾がパシャパシャと尻を叩きぬ動きこまかに
丘のごと盛上る尻をかつがつも支へて立てる足の短かさ
三角の尻尾の先端ゆ濁る水のまだ滴(したゝ)りて河馬は動かず


〔画像は愛媛県立とべ動物園〕

【典拠文献】
『中島敦全集1』ちくま文庫 1993年1月

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