中島敦「黒豹」の歌

DSCF2713_convert_20110529084609.jpg

DSCF2806_convert_20110529092439.jpg

中島敦(1909-1942)の歌稿にある「黒豹」の歌。

  黒豹
ぬばたまの黒豹の毛もつやつやと春陽(はるび)しみみに照りてゐにけり
思ひかね徘徊(たもとほ)るらむぬば玉の黒豹いまだ独り身ならし


「ぬばたまの」は「黒」にかかる枕詞。「徘徊」の字をあてた「たもとほる」は同じ場所をぐるぐる回ること。檻の中で常同行動をしていることを言ったものであろう。

中島敦の歌稿のほとんどは昭和12年(1937)11、12月ごろに詠まれたものだという。掲出の歌は上野動物園の黒豹を詠んだものであろう。同園の黒豹は、昭和11年7月24日夜に脱出事件を起こしたことがある。警察、憲兵隊、民間の鉄砲隊などが出動する大騒動となったようで(25日に千川上水の暗渠で捕獲)、二・二六事件、阿部定事件とあわせて昭和11年の三大事件といわれた。この騒動を起こした黒豹は同年5月にシャム(タイ)から贈られたメスの野生個体であった。

〔画像は愛媛県立とべ動物園〕

【典拠文献】
『中島敦全集1』ちくま文庫 1993年1月
小宮輝之『物語 上野動物園の歴史』中公新書 2010年6月

にほんブログ村 地域生活(街) 四国ブログ 愛媛県情報へ
にほんブログ村
にほんブログ村 地域生活(街) 四国ブログ 松山情報へ
にほんブログ村

テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
QRコード
QRコード