秋山兄弟―「兄は将たるの大器、弟はどこまでも帷幄の謀将なり」

水野広徳(軍事評論家)の日記、昭和14年(1939)11月15日条に、秋山好古、真之兄弟の人物評を記した次のような文言がある。

先キニ兄好古大将ノ伝記ヲ編纂シ、今又弟真之中将ノ伝ヲ改編シ、兄弟ノ人物ニ就ヒテ多少観ル所アリ。兄ハ茫漠タル裡ニ要領ヲ失ハズ、弟ハ磊落ナルガ如クニシテ過敏ナリ。兄ハ将ニ将タルノ大器ヲ有スルモ弟ハ何処マデモ帷幄ノ謀将ナリ。兄ハ広ク社会ヲ見ルノ明アルモ弟ハ無思想ナル一介ノ武弁ヲ出デズ。但シ軍界ノ傑物タルヲ失ハズ。今回仔細ニ秋山真之ヲ研究シテ彼ニ対スル認識ヲ新タニス。彼ノ文章ニ至リテハ雄渾簡潔独特ノ風格ヲ有ス。


秋山兄弟の個性の違いを鋭くついた適確な評といえるのではなかろうか。水野は秋山兄弟の公式の伝記の事実上の執筆者で、真之の伝記の改訂を終えたその日に上引の評を自身の日記に書き付けたのであった。水野にとって秋山真之は海軍の先輩にあたる人であるが、水野は必ずしも真之に心酔していたわけではなかったようで、日記の同日条には、「終日秋山真之伝改訂、漸ク一先ヅ終了ス。ヤレヤレ我レ秋山ニ何ノ義理アリテ斯カル面白クモナキ仕事ヲ引受ケタル? 要スルニ意志薄弱ニシテ当初拒絶セザリシニ由ル。再ビ斯カル愚ヲ繰リ返スベカラズ」との文言がみえる。

【典拠文献・参考文献】
『水野広徳著作集』第7巻(評論Ⅳ 日記・書簡)雄山閣出版 1995年7月

にほんブログ村 歴史ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 地域生活(街) 四国ブログ 松山情報へ
にほんブログ村



テーマ : 歴史上の人物
ジャンル : 学問・文化・芸術

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
QRコード
QRコード