「金」と書いて「あき(秋)」と訓む

①秋の野のみ草刈り葺(ふ)き宿れりし宇治のみやこの仮廬(かりいほ)し思ほゆ
②秋風に山吹の瀬の鳴るなへに天雲(あまくも)翔(かけ)る雁に逢へるかも


①②はいずれも『万葉集』の歌。①は巻1・7の額田王の歌、②は巻9・1700の歌で、作者名の記載はないが、柿本人麻呂の詠といわれている。両首ともに「秋」の語があるが、『万葉集』の原文では、この「あき」に「金」の字があてられている(①「金野乃~」、②「金風~」)。「金」と書いて「あき(秋)」。無理な訓読のようだが、これは中国の五行説の配当によるものらしい。五行説によると、木は春、火は夏、土は土用、金は秋、水は冬にそれぞれ配当される。「金=秋」であることから、やまとことばの「あき」に「金」の字をあてた。よく考えたものだが、こうなると原文を解読する側にとってはほとんど謎解きに近い。『万葉集』にはほかにも「義之」と書いて「てし」と訓むなど、まさに謎解きそのものといっていいような用字法がある。この「義之」については明日のブログ記事で述べることにしよう。

【典拠文献・参考文献】
中西進『万葉集 全訳注原文付(一)』講談社文庫 1978年8月
中西進『万葉集 全訳注原文付(二)』講談社文庫 1980年2月
伊藤博『萬葉集釋注 一』集英社文庫ヘリテージシリーズ 2005年9月
伊藤博『萬葉集釋注 五』集英社文庫ヘリテージシリーズ 2005年9月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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