烏帽子(えぼし)

烏帽子は成人の男性が日常に着用したかぶりもの。布帛もしくは紙製で、黒色の烏塗りであったことからその名がある。古くは身分の上下にかかわりなく用いられ、これをかぶらないままの露頂を人に見せるのは恥辱とされた。民俗学者の宮本常一はこの烏帽子について絵巻史料にもとづいた次のような指摘をしている。

「源氏物語絵巻」柏木の巻でふれておきたいことがある。それは柏木の臥している姿である。枕をたてにして、それに顔をあてて横になっている。しかも烏帽子をかぶったままである。この時代には烏帽子をかぶったまま寝たもののようである。人の寝ている姿は絵巻物にはあまり多く出てこない。それの比較的多く描かれているのは「春日権現験記絵」で、これは延慶二年(一三〇九)に描かれたものであるが、その時期には烏帽子はもうぬいで寝ている。この絵巻より少し早く、十三世紀の中ごろに描かれたのではないかと見られている「小柴垣草紙」とよばれる秘戯の絵巻には、烏帽子をかぶったまま行為しているから、この絵巻の描かれた少しまえのころまでこのような習俗が見られたのではなかろうか。


古代から中世前期頃にかけて烏帽子は常時着用すべきものであったようである。古代・中世=烏帽子、近世=月代(さかやき)、近現代=ネクタイ、どの時代においてもわずらわしい習俗が何かしらのかたちであるようである。

【典拠文献・参考文献】
『国史大辞典』第2巻(鈴木敬三執筆「烏帽子」の項)吉川弘文館 1980年7月
宮本常一『絵巻物に見る日本庶民生活誌』中公新書 1981年3月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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