『おあむ物語』

『おあむ物語』は戦国時代の籠城戦を体験した「おあむ」と呼ばれる女性の回顧談を筆録したもの。籠城戦のなかでの女性たちの模様を知ることができる貴重な史料といわれている。その内容の一部を記しておこう(以下取意)。「石火矢(大砲)をうつと、櫓もゆれ動き、地面も裂けるようで、気の弱い女性などは即座に目をまわした。はじめは生きた心地もしなかったが、そのうち慣れて恐ろしくなくなった。私も母も、そのほか家中の者たちの妻や娘たちも、みな天守に集って鉄砲玉を鋳造した。味方が取ってきた首は天守に集められたが、それぞれに札をつけ、しばしばお歯黒をつけてやった。身分のある者はお歯黒をつけていたので、白歯の首があるとお歯黒をつけてくれと頼まれていたからである。首も格別恐ろしいものではない。首が並んでいる血なまぐさい中で寝たものだった」云々。おあむが語る籠城の模様はなんともすさまじい。この部分の原文も掲録しておこう。「石火矢をうてば、櫓もゆるゆる動き、地もさけるやうに、すさまじいさかいに、気のよわき婦人なぞは、即時に目をまはして、難義した。それゆゑに、まへかたふれておいた。其ふれが有ば、ひかりものがして、かみなりの鳴をまつやうな心しておじやつた。はじめのほどは、いきたこゝちもなく、たゞものおそろしや、こはやと斗、われも人おもふたが、後には、なんともおじやる物じやない。我々母人も、その他、家中の内儀、むすめたちも、みなみな、天守に居て、鉄砲玉を鋳ました。また味かたへ、とった首を、天守へあつめられて、それぞれに、札をつけて、覚えおき、さいさい、くびにおはぐろを付て、おじやる。それはなぜなりや。むかしは、おはぐろ者は、よき人とて賞翫した。それ故、しら歯の首は、おはぐろ付て給はれと、たのまれて、おじやつたが、くびもこはい物では、あらない。その首どもの血くさき中に、寝たことでおじやつた」云々。おあむは石田三成に仕えていた山田去暦という武士の娘。『おあむ物語』は「御庵物語」、老尼の物語の意であるという。おあむが体験した籠城戦は関ヶ原の合戦直後の美濃大垣城でのものであった。

【典拠文献・参考文献】
中村通夫・湯沢幸吉校訂『雑兵物語・おあむ物語』岩波文庫 1943年5月
山田邦明『日本の歴史8 戦国の活力』小学館 2008年7月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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