蘇山人(2)

蘇山人(本名羅朝斌)は永井荷風とも親交があった。この二人は尾崎紅葉・高浜虚子の判で句合せをおこなっているが、俳句に堪能であった荷風とほぼ互角のような勝負であるから、蘇山人の力量は並みのものではない。荷風の随筆「日和下駄」に蘇山人に言及した記述があるので、引用しておこう。

十余年前楽天居小波山人の許に集まるわれら木曜会の会員に羅臥雲(注-臥雲は蘇山人の別号)と呼ぶ眉目秀麗なる清客があった。日本語を善くする事邦人に異らず、蘇山人と戯号して俳句を吟じ小説をつづりては常にわれらを後(しりえ)に瞠若たらしめた才人である。故山に還る時一句を残して曰く
行春の富士も拝まんわかれかな
蘇山人湖南の官衙にあること歳余病を得て再び日本に来遊し幾何もなくして赤坂一ツ木の寓居に歿した。わたしは富士の眺望よりしてたまたま蘇山人が留別の一句を想い倜悵としてその人を憶うて止まない。
君は今鶴にや乗らん富士の雪


文中に出てくる「木曜会」は巌谷小波を中心とする文芸の研究会。荷風は蘇山人の紹介によって巌谷に会い、木曜会の会員になったという経緯がある。

【典拠文献・参考文献】
中村忠行「辮髪の俳人蘇山人」(『子規全集』第16巻「月報」5 1975年8月)
野口冨士男編『荷風随筆集(上)』岩波文庫 1886年9月
秋庭太郎『考証永井荷風(上)』岩波現代文庫 2010年5月

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テーマ : 歴史
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