「鬼瓦」

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「鬼瓦が女房の顔にそっくりで……」というのが笑いどころの狂言の曲目、その名も「鬼瓦」というのがある。訴訟のため長期の京都滞在を余儀なくされていた殿がようやく国元へ帰れることになり、日ごろ信仰する因幡薬師堂に太郎冠者を連れてお礼参りをするのだが、その堂の屋根の鬼瓦を見て、殿は突然泣き出す。

(殿)飛騨の匠が建てたと聞いたが見事な堂ぢゃ。
(冠者)よい恰好な堂でござる。
(殿)あの屋根の角にある物は何ぢゃ。
(冠者)鬼瓦と申す物でござる。見事にいたしてござる。殿様はなぜ泣かしらるるぞ。
(殿)鬼瓦はそのまま女房ども(注-「女房ども」で自分の妻の謙称。この「ども」は複数の意ではない)の顔ぢゃ。それで泣く。
(冠者)見ますれば、お内儀様によく似せてござる。
(殿)目の皿ほどに見ゆる。よく似た。
(冠者)口の耳せせ(注-耳のうしろの部分)まで大きなもお内儀様ぢゃ。
(殿)いつのまに女房どもを何者がうつしてあそこには置いたぞ。
(冠者)不思議なことでござる。
(殿)冠者、よい仕合せで国へ帰る。めでたい、泣くところではない。めでたう笑うて下向いたさう。
(冠者)それは一段めでたう、ようござりませう。
(殿)笑へ笑へ。


鬼瓦を見て国元の妻を思い出した殿、鬼瓦に似た妻でも懐かしさにこらえきれず泣いたのであった。

【参考文献】
野村八良校注『狂言記 下』有朋堂書店 1926年8月

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テーマ : 日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

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