「小生は非常に海を愛し候」

DSCF1387_convert_20141209185807.jpg

小生は非常に海を愛し候。一日にても海の波をながめおり候。浪は無限その物の動きのようにて候。(大正9年8月4日付・田辺元あて西田幾多郎書簡)


DSCF1549_convert_20150118093406.jpg

心おとろえたときは海に行こう。心熾(さか)んなときも海に行こう。(中略)海はその涯しない広さと、生気にみちた明るさと、絶えまのない動きとによって、われわれを内部へではなく外部へと向かわせる。山は人を抱擁し、やすませ、休息させ、内省させるが、海は人を解放し、逃亡させ、活動させるのである。それゆえに、海に行こう。自ら心に恃(たの)むところのある者は山に行くがよい。山は彼らの思いを浄め、その暗く深い谷で彼らの孤独を養い、その聳え立つきびしい高さで彼らの孤高を磨くであろう。しかし、忘却と自由とを、解放と夢とを願う者は、海に行こう。海は縛られた心を解き放ち、紺青の波が無辺の遠くから運んでくる爽やかな大気でわれわれを満たし、岸々を洗う縁飾りのようなその白い波頭で感情と思考とを洗うのである。(矢内原伊作「海について」)


DSCF0517_convert_20141211080336.jpg

海は、大地のように人間の営為と生命の痕跡をとどめはしない。そこには何ものもとどまらず、そこを通るものはすべて逃げ去る。海を横切る船の航跡も、どんなに早くかき消えてしまうことか! 地上の事物には決して見られない海の純粋さはそこから生じる。(プルースト『楽しみと日々』)


D諸島SCF0656_convert_20141211080506

これらの小さな島々は、どれもこれも似たりよったりだったが、それが私の旅情をそそったのは、生涯、またとその島を訪れることのないのがわかっていたからである。こういう眼で眺めると、それらの島々のひとつびとつが、なにかしらこの世のものではないように思われた。船がしだいに遠ざかっていくにつれて、島影が水と空の彼方に没してしまうと、まさかそんなことがとは思っても、それらの島々が、私のチラリと見たのを最後に、この世界から永遠に姿を消してしまったような気がしてならなかった。(モーム「四人のオランダ人」『コスモポリタンズ』)


【参考文献】
矢内原伊作『矢内原伊作の本1 顔について』みすず書房 1986年10月
モーム作・龍口直太郎訳『コスモポリタンズ』ちくま文庫 1994年12月
『西田幾多郎随筆集』岩波文庫 1996年10月
プルースト作・岩崎力訳『楽しみと日々』岩波文庫 2015年1月

にほんブログ村 地域生活(街) 四国ブログ 愛媛県情報へ
にほんブログ村
にほんブログ村 地域生活(街) 四国ブログ 松山情報へ
にほんブログ村

テーマ : 日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
QRコード
QRコード