鴎外編集の奇書『椋鳥通信』

永井荷風の日記、昭和12年(1937)11月19日条に「枕上『むく鳥通信』をよみて眠る」という記述。この日、荷風は敬愛していた森鴎外の『椋鳥通信』を読みながら就寝した。

『椋鳥通信』は鴎外による海外情報の抄録記事。鴎外は自身が定期購読していた欧州の新聞などから情報を拾い出して編集し、『椋鳥通信』と題して雑誌に連載した(1909年~14年連載)。記事には下のような珍談に属するものが多く、一大奇書ともいうべき内容の読物となっている。

一九〇九年五月十五日発
SerbiaでKosta Nikolic(コスタ ニコリッチ)という百十五歳の爺さんが自殺した。病身になって世をはかなんだということである。少し滑稽に感ずる。

一九〇九年七月四日発
巴里の女優Cassive(カシーヴ)の部屋で情夫が自殺した。アレクサンドリヤの富豪Achillopyio(アキロプーロス)の息子で二十八歳である。この女の部屋で男の自殺したことがこれ迄四人あった。これが五人目である。


こうした記事がつづくこの書を荷風は睡眠導入剤代わりとしていたのかもしれない。

それにしても鴎外という人、官僚としての多忙な生活の中、自身の貴重な時間を費やして、なぜこうした珍談収集のような仕事をしたのだろうか。『椋鳥通信』が奇書である以上に、鴎外という人が不思議な、奇異な人であるように思われる。

【参考文献】
永井荷風著・磯田光一編『適録 断腸亭日乗(下)』岩波文庫 1987年8月
池内紀編注『森鴎外 椋鳥通信(上)』岩波文庫 2014年10月

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〔記事と画像は無関係〕

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テーマ : 歴史上の人物
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