『坊っちゃん』に出る「角屋」と「枡屋」

夏目漱石の『坊っちゃん』に「温泉の町」(道後)の「角屋」「枡屋」なる宿屋が登場する。

「さうか、大抵大丈夫だらう。それで赤シャツは人に隠れて、温泉()の町の角屋へ行って、芸者と会見するさうだ」
「角屋って、あの宿屋か」
「宿屋兼料理屋さ。だからあいつを一番へこます為には、彼奴が芸者をつれて、あすこへ這入り込む所を見届けて置いて面詰するんだね」
「見届けるって、夜番でもするのかい」
「うん、角屋の前に枡屋と云ふ宿屋があるだらう。あの表二階をかりて、障子へ穴をあけて、見て居るのさ」(『坊つちゃん』十)

山嵐は(中略)温泉の町の枡屋の表二階へ潜んで、障子へ穴をあけて覗き出した。(中略)宵から十二時過迄は眼を障子へつけて、角屋の丸ぼやの瓦斯灯の下を睨めっきりである。(中略)
角屋から出る二人の影を見るや否や、おれと山嵐はすぐあとを尾けた。(『坊つちやん』十一)


この「角屋」は道後商店街L字角の「かど半」、「枡屋」はその向かいにあった「島屋」であるという。

昔、「遊びは別府、湯治は道後」といわれ、道後は、湯治場としての自炊宿・商人宿、四国八十八か所の遍路宿の並ぶ町として知られ、(中略)湯の町の中心には、「三浦屋」「金竹」「すし元」「かど半」「くしや」「島屋」「国中」「寿美屋」「桜屋」「今治屋」「小川」「とらや」などの古い宿の看板が並んでいた。(中略)その中には「島屋」・「かど半」が小説「坊っちゃん」ゆかりの宿として旅行者の眼を引いたこともある。(『愛媛県史 地誌Ⅱ(中予)』)


坊っちゃんと山嵐が楯こもった枡屋がいま竹細工の土産物を売ってゐる島屋で、その向ひの角屋とあるのがもちろん角半であらう。(曾我正堂『伊予の松山と俳聖子規と文豪漱石』)


「かど半」は旅館業から転身して現在は土産物店。店の看板には「夏目漱石 坊っちゃんゆかりの店 かど半本舗」とある。「島屋」は竹細工店に転身するもすでに廃業、現在はローソン道後ハイカラ通店となっている。

▼ 道後商店街(通称「道後ハイカラ通り」)駅前入口
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道後温泉駅前から道後温泉本館前までの短い商店街。そのL字角に「かど半本舗」がある。

【参考文献】
曾我正堂『伊予の松山と俳聖子規と文豪漱石』三好文成堂 1937年4月
愛媛県史編纂委員会編『愛媛県史 地誌Ⅱ(中予)』1984年3月
『漱石全集』第2巻 岩波書店 1994年1月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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