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ルイス・フロイスの『日本史』-「日本最大の海賊」

戦国時代、芸予諸島の海の領主として強勢を誇った能島村上氏。ポルトガル人宣教師ルイス・フロイス(1532-1597)の『日本史』には、この能島村上氏が「日本最大の海賊」であると記されている。

副管区長(コエリュ)師は室(むろ)を出発して旅を続け、やがて我ら一行は、ある島に到着した。その島には日本最大の海賊が住んでおり、そこに大きい城を構え、多数の部下や地所や船舶を有し、それらの船は絶えず獲物を襲っていた。この海賊は能島殿といい、強大な勢力を有していたので、他国の沿岸や海辺の住民たちは、能島殿によって破壊されることを恐れるあまり、彼に毎年、貢物を献上していた。(第六〇章〈第二部七七章〉)


能島村上氏は海賊の頭目として恐れられていた。海賊というと、船舶を襲撃して略奪をほしいままにする海の犯罪者というイメージだが、実際は海の領主。領有海域を航行する船舶を監視して、無断通行する船があれば検断する。軍事的にも強大な水軍力で、瀬戸内周辺での合戦という事態になると、海賊を味方につけようと多くの戦国大名たちが画策した。

能島村上氏は芸予諸島の能島を本拠地として多くの海賊衆を従えていた。フロイス一行は航行中に海賊の襲撃をうけないようにするため、この能島村上氏から「通行保証状」を得ようとする。

我ら同僚司祭や修道士たちは、このあたりが多数の島嶼であるために絶えず船で通行せねばならなかったし、つねに海賊の手に陥る危険に曝されていたので、副管区長の司祭は、その人物から通行保証状をもらえないものか交渉したいと考えた。すなわちそれが得られれば、たとえ彼の手下の海賊たちに捕えられることがあっても、掠奪されたり危害を加えられたりすることなしに済むからであった。
我らはちょうどこのたび伊予国への途上、能島殿の城から約二里の地点にいたので、副管区長師は、一人の日本人修道士に贈物を携えさせ、彼に交渉するように命じ、能島殿に対して、我らがその交付する署名によって自由に通行できるよう、好意ある寛大な処置を求めた。能島殿は、その修道士に尊敬を払い、手厚くもてなし、彼を自らの居城に招待した。そして己が好意をより高く売りつけようとして、いくらか躊躇しながら言った。「伴天連が、天下の主、関白殿の好意を得て赴かれるところ、某(それがし)ごとき者の好意など必要ではござらぬ」と。だが修道士がしきりに懇願したので、彼は、怪しい船に出会った時に見せるがよいとて、自分の紋章が入った絹の旗と署名を渡した。それは、この海賊が司祭に対してなし得た最大の好意であった。(同上)


フロイス一行は瀬戸内海の「通行保証状」として、能島村上氏から「紋章が入った絹の旗と署名」を与えられた。この紋章というのは能島村上氏の家紋である「上」の字。同氏が発給するこの「上」の家紋入りの旗を船に掲げていれば瀬戸内の海賊らは襲撃をみあわせたので、これが安全に航行するための「通行保証状」となったのであった。

フロイスの『日本史』には能島村上氏に匹敵する海賊来島村上氏についての記述もある。

日本中で最高の海賊としてその座を競い合ってきたのはただ二人だけで、彼らの館は何年も前から存続し、彼らは強大な主として公認され、そのように扱われ、奉仕されて来た。その一人は今述べた能島殿であり、他の一人は来島殿と称する。来島殿については、彼がその幾人かの部下とともに、いかにしてキリシタンになったかを次年度の記事の中で述べることにする。(同上)

日本には、往昔の国主たちの特許状によって、当初から、全海域と海国の最高指揮官をもって任ずる二人の貴人がいる。そして海国の人々は諸地方において、安全に生活するために、毎年、彼らに貢税を払っている。彼らの一人は、すでに述べるところがあった能島殿であり、他の一人は来島殿と称し、官兵衛殿に伴ってこの戦に従っている。官兵衛殿はこの人にキリシタンの教義をすべて聴聞させた。彼は教えを理解すると、洗礼を受けるため、彼とともに聴聞した幾人かの家臣とともに戦場から下関に向かった。(第六一章〈第二部八二章〉)


キリシタンになったというこの「来島殿」とは村上通総(みちふさ)のことであるらしい。

能島村上氏と来島村上氏はともに伊予の豪族河野氏に臣従していたが、研究者によると、能島村上氏は独立性がつよく、河野氏との間にはやや距離があったのに対し、来島村上氏は河野家臣団に属し、その重臣の一人であったという。

【典拠文献・参考文献】
山内譲『海賊と海城 瀬戸内の戦国史』平凡社選書 1997年6月
山内譲『中世瀬戸内海の旅人たち』吉川弘文館 2004 年1月
松田毅一・川崎桃太訳『完訳フロイス日本史3』中公文庫 2000年3月
松田毅一・川崎桃太訳『完訳フロイス日本史11』中公文庫 2000年11月

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テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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