西田幾多郎「海」の歌

哲学者西田幾多郎(1870-1945)が詠んだ「海」の歌。

大海原空行く雲をながめつゝ一日(ひとひ)暮しぬ物思ひして
天地(あめつち)の分れし時ゆよどみなくゆらぐ海原見れど飽かぬかも
大海原立つさゞ波も奇()しきかな常世(とこよ)の国に通ふと思へば
打わたす大海原に夕日入り漕ぎ行く舟は見るにさやけし
朝に夕に移ろふ日々の海の面は日々に見れども飽くこともなし
春の海尚いくそたびこの里にながめに来らむ老いにし吾は


「見れど飽かぬかも」や「吾は」の結びは『万葉集』からとられたもの。西田幾多郎は「歌において『万葉』を師とすべきはいうまでもない」(「短歌について」)と述べているから、古代のこの歌集を範として作歌したのであろう。

西田は「純粋経験に関する断章」のなかで「海をながめるのも無限に深い意味のあるものである。余は唯無限に遠い海のうねりを眺めるだけにて飽くことを知らない」といい、「鎌倉雑詠」のなかで「私は海を愛する、何か無限なものが動いているように思うのである」と述べている。海に無限なものを感じとり海を愛した西田。この哲学者と海とのかかわりについては、「限りなく広がる海、くり返し打ち寄せる波濤のなかに感じとられる「無限なもの」が西田を魅了してやまなかったのは、おそらくその限りなさが、自らのなかにある「無限なもの」と重なりあうように感じられたからであろう」(藤田正勝『西田幾多郎』)という指摘がある。

[掲載画像は西瀬戸の風景]

【典拠文献】
藤田正勝『西田幾多郎-生きることと哲学』岩波新書 2007年3月 
上田薫編『西田幾多郎歌集』岩波文庫 2009年11月

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テーマ : 歴史上の人物
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