西田幾多郎「私は海を愛する」

西田幾多郎(1870-1945)が能登七尾で中学の分校教師をしていた頃、毎日のように浜に出ては海を見つめ長い間思いに耽っていたという。何か考え事かと尋ねると、「世界のことを考えている。世界というものは不思議なものだ」と答えたので、妙なことを言う人だと思ったというのが、当時を知る人の話だそうである。

天地(あめつち)の分れし時ゆよどみなくゆらぐ海原見れど飽かぬかも


西田幾多郎が58、9歳の頃に詠んだ「鎌倉雑詠」に上の歌がある。「天地の分れし時ゆ」は「天地が分れて世界ができあがったときより」、「見れど飽かぬかも」は「見ても見ても見飽きないことよ」の意。西田はこの歌の詞書を

私は海を愛する、何か無限なものが動いているように思うのである。


と記した。何か無限なものが動いている。そうしたことを実感させて、哲学的な思索へと誘い出すのが西田にとっての海だった。

西田幾多郎が見た海は、故郷加賀の海、赴任先の能登の海、そして退官後を過ごした鎌倉の海。西田は海にはそれぞれ相貌があるとも述べている。

金沢行の序(ついで)、橋立の方へもおよりの由。私も北国の海はどうも東海道辺の海と違うと存じます。何もない唯茫々たる海水には何も変りもなさそうなものだがそうでない。私はいつも海にPhysiognomie(相貌)があると申すので御座います。(昭和18年9月21日付・木村素衛宛書簡)


▼ 西瀬戸の海
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島々が点在し波も静かなここ伊予の海。穏やかな相貌のこの西瀬戸の海は哲学的な思索というようなことも忘れさせてくれる海かもしれない。

【典拠文献・参考文献】
上田閑照編『西田幾多郎随筆集』岩波文庫 1996年10月
上田閑照『西田幾多郎を読む』岩波書店 1991年11月
上田閑照『西田幾多郎とは誰か』岩波現代文庫 2002年11月
上田薫編『西田幾多郎歌集』岩波文庫 2009年11月

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テーマ : 歴史上の人物
ジャンル : 学問・文化・芸術

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