松茸

秋の香り、松茸。その香りのよさは万葉の時代からすでに認識されていた。

高松のこの嶺(みね)も狭()に笠立てて満ち盛りたる秋の香のよさ (万葉集』巻10・2233)


奈良の高円山の松茸を詠んだ万葉歌。歌意は「高松(高円山)のこの峰も狭しと笠を突き立てて、満ちあふれている秋の香りのなんとよいことか」。松茸が秋の香であるとは、この万葉の時代からの感覚だったのである。

松茸のその香りを活かした食べ方。懐石料理の大家、辻嘉一は次のような食べ方が最上であるという。

松茸山で採れたばかりの松茸を、枯れ松葉で焼いたのを食べよく指で割()き、柚子とか酢橘(すだち)に醤油をたらした中へ落し入れ、熱のある間に食べるのが最上の食べ方で、香りは高く松茸そのものの旨さがなっとくできます。(辻嘉一『味覚三昧』「菌」)


清酒をつかった次のような食べ方もあるという。

松茸山を持った人達でないと、今は無理でしょうが、土瓶の中へ、食べよく切った松茸を一杯詰め込み、清酒を入れて火にかけ、ひと吹きしたら柚醤油を落し入れて、すぐ味わうのであります。近頃、こんなことをしようものなら、高価な土瓶蒸しとなりましょう。(同上)


土瓶蒸しについては次のように述べている。

普通、土瓶蒸しは松茸の香味を大切に考え相手役に濃厚なものはいけません。ハモ、鶏の笹身、車海老といったものを一緒に入れ、お加減のできたおつゆをはり、火にかけて吹いてきたら、すぐ、皿の上にのせて食卓へ運び、酸味をしぼって別猪口へお汁を注ぎ、味はお好みに調節して召しあがるのが、上々であります。(同上)


これらが松茸の香りを損なわない食べ方ということになるのであろう。

【典拠文献・参考文献】
辻嘉一『味覚三昧』中公文庫 1979年4月
伊藤博『萬葉集釋注 五』集英社文庫 2005年9月

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テーマ : 日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

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