「幸福の秘訣」

正岡子規の内なる精神の活力-芥川龍之介はそれに驚嘆している。

子規の生活力の横溢せるには驚くべし。子規はその生涯の大半を病牀に暮らしたるにも関らず、新俳句を作り、新短歌を詠じ、更に又写生文の一道をも拓けり。しかもなほ力の窮したるを知らず、女子教育の必要を論じ、日本服の美的価値を論じ、内務省の牛乳取締令を論ず。殆ど病人とは思はれざるの看あり。(芥川龍之介「病中雑記-「侏儒の言葉」の代りに-」)


子規のその活力は自己の外側のさまざまな事柄に対する尽きざる関心となってあらわれた。哲学者のバートランド・ラッセルは『幸福論』の中で、

幸福の秘訣は、こういうことである。あなたの関心をできるだけ幅広くせよ。(中略)人間は関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になる機会が多くなる。(渡邊二郎訳)


と述べているが、子規はラッセルのいうその「幸福の秘訣」を心得た人であったといえるかもしれない。

【参考文献】
安藤貞雄訳『ラッセル幸福論』岩波文庫 1991年3月
『芥川龍之介全集』第13巻 岩波書店 1996年11月
『渡邊二郎著作集』第12巻 筑摩書房 2011年8月

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テーマ : 歴史上の人物
ジャンル : 学問・文化・芸術

石崎汽船、本社移転

三津の老舗企業、石崎汽船の本社が高浜の観光港ターミナル内に移転。大正13年(1924)に建てられた当時としては画期的な洋風建築の本社ビル(三津1丁目)はどうなるのであろうか。

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テーマ : 日記
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ペリー来航の日

嘉永6年6月3日、ペリーの率いるアメリカの艦隊が浦賀に来航。この日は西暦では1853年7月8日、160年前の今日である。ペリーの『日本遠征記』によると、艦隊の浦賀沖到着は同日の午後5時頃、朝は曇っていて靄が濃かったが、浦賀に着いた頃には晴れ上がり、富士山の頂まではっきり見えたという。

この朝は空が非常に曇って靄が濃かったので、不幸にも眼界は極めて狭く、噂に聞く日本の天気の特徴が確かめられたように思われた。(中略)
大島と呼ばれているヴリース島を擁する相模湾口を右舷に通過して、艦隊は相模岬へ向って進航した。靄が都合よく霽れたので、今や大富士が相模湾の背後に聳えているのが見え、その円錐形の頂は天空高く聳えて遥かの彼方に姿を現していた。またその頂には白い帽子をかぶっていたが、それが果して白雪であるか或いはまた白雲であるかは見分けがつかなかった。(中略)
午後五時頃艦隊は江戸湾の西側にある浦賀町の沖合に投錨した。(中略)
投錨直前に天候はからりと晴れ渡り、富士山の高い頂はますますはっきりと見え、遥か彼方に横たわる群峰から抜きん出て高く聳えていた。標高八千乃至一万フィートと測定された。(『日本遠征記』第12章)


日本の開国を求めての来航。だが、それは日本に対する武力行使をも想定したものであった。

武力に訴えての上陸の問題は事件の今後の発展によって決定されるものであった。これは勿論、採らるべき最後の手段であったし、また最後たることが望ましかった。しかし提督は最悪の場合を予想して、艦隊に対して絶えず完全な準備をさせておき、戦時中と全く同様に乗組員を徹底的に訓練した。(同上)


浦賀投錨の3日後、ペリーは幕府の番船を阻止して江戸湾内に測量船を送りこんでいるが、これは日本の「領土への武力侵入であり、日本の国法に反するとともに、ペリー自身が遵守すると述べていた文明国の慣行、近代国際法にもまったく違反するものであった」(井上勝生『幕末・維新』)と指摘されている。

【参考文献】
土屋喬雄・玉城肇訳『ペルリ提督日本遠征記(二)』岩波文庫 1948年10月
井上勝生『幕末・維新 シリーズ日本近現代史①』岩波新書 2006年11月

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テーマ : 歴史
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ペリー来航中の小さなエピソード

1853年7月15日、ペリーは江戸湾内に測量隊を派遣した。江戸湾内の測量は11日についでこれが二度目。湾内を一度目の時よりもさらに奥に進むと、豊かで美しい田園風景がひろがっていたという。

翌早朝、提督の命令によって一隊の測量隊が再び派遣され、同湾のもっと奥を測量させられた。(中略)そこには、一つの入江があり、その四囲には一の河流に灌漑されている美しい田野があった。その河流の両岸にある豊饒な土地には、絵のような日本人村が多数群をなし、豊饒な田畑と、立派に耕された園地とが村々の彼方に横たわっていた。(『日本遠征記』第14章)


好奇心でいっぱいの村の住民たちが集まる。親切なもてなし。だが、厳格な役人が来てかれらを追い払ってしまう。

士官たちはボートに命じてその川を漕ぎ上った。そして航進してゆくうちに、外国人を見たいという好奇心を満足させようとして岸に集まって来た住民の群れに出会った。人民の或る者はあらゆる身振り手真似で歓迎の意を表してボートに挨拶をし、ボートへ喜んで、水と、すばらしい梨を幾個か提供してくれた。傍に二三艘の政府御用船がいて、その船に乗り込んでいる役人たちは、われわれを歓迎し、われわれを訪ねてくれた。その訪問の間に、互いに友情がわき、アメリカ人は日本人と一緒になって煙草を交換し合って喫んだ。わが士官たちは彼等の親切なもてなしに返礼として、自分たちの短銃を見せ、それを発射して、初めてそれを見た群集を興がらせ、日本人をいたく喜ばせた。このように極めてなごやかに交歓し楽しんでいる最中に――この交歓に当たって日本人の態度は極めて愛想よく、その歓待ぶりは甚だ鷹揚なものだった――或る厳格な役人がやって来て、同国の人たちを手まねで立ち去らせた。日本人は大急ぎで散って行った。(同上)


日本人の親切な気質、美しい風景。ペリーの部下たちはそれに魅了される。

艦載ボートが測量から帰って来ると、士官たちや部下たちはすべて日本人の親切な気質と国土の美しさに、有頂天になっていた。実際眼の向くどこでも、風光絵のごとく、それ以上麗しい風景は他になかった。艦上にいる者さえ、周囲の海岸を眺めて飽くことを知らなかった。到るところのよく耕されている土地、濃い豊かな緑のあらゆる草木、同湾の単調を破っている入江の奥に林に囲まれている無数の繁茂せる村々と、丘々の緑の傾斜を流れ下りて静かに牧場の間をうねっている渓流とが相合して、麗しい、豊かな、幸福な景色を呈しており、あらゆる人々はそれを眺めて心を楽しませた。(同上)


登場する日本人の明るく社交的なふるまいが印象的なエピソード。幕末・維新史が専門の学者にこのエピソードに言及しての指摘があるので、引用しておこう。

幕末の民衆が、親切で社交的で快活な振る舞いをみせるのはじつは珍しいことではない。一面化をおそれず言えば、その方が普通なのである。文明開化以前には、「外人」などと恐れたりはしなかった。「嫌悪と警戒、虚勢と恐怖」は、むしろ近代日本のエリートたちから拡散した。(井上勝生『開国と幕末変革』)



【参考文献】
土屋喬雄・玉城肇訳『ペルリ提督日本遠征記(三)』岩波文庫 1953年9月
井上勝生『日本の歴史18 開国と幕末変革』講談社 2002年5月

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「退屈に耐える力」

「退屈に耐える力」というものをある程度持つことが必要だと哲学者のラッセル(1872-1970)はいう。

退屈に耐える力をある程度持っていることは、幸福な生活にとって不可欠であり、若い人たちに教えるべき事柄の一つである。(『幸福論』)


同じことの繰り返し、単調な毎日、それに耐える力を幼年時代に身につけなければならないともいっている。

多少とも単調な生活に耐える能力は、幼年時代に獲得されるべきものである。この点で、現代の親たちは大いに責任がある。彼らは子供たちに、ショーだの、おいしい食物だのといった消極的な娯楽をたくさん与えすぎている。そして、毎日毎日同じような日を持つことが子供にとってどんなに大切であるかを、真に理解していない。(中略)退屈に耐えられない世代は、小人物の世代となるにちがいない。(同上)


刺激にみちた生活ではなく、静かな生活。

あまりにも興奮にみちた生活は、心身を消耗させる生活である。(同上)

幸福な生活は、おおむね、静かな生活でなければならない。なぜなら、静けさの雰囲気の中でのみ、真の喜びが息づいていられるからである。(同上)


「大地」の生に根ざしてゆったりと生きるのがラッセルの人生哲学であった。

私たちは〈大地〉の子である。私たちの生は〈大地〉の生の一部であって、動植物と同じように、そこから栄養を引き出している。〈大地〉の生のリズムはゆったりとしている。(同上)



【参考文献】
安藤貞雄訳『ラッセル幸福論』岩波文庫 1991年3月

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